SDGs達成 × ドローン

SDGs教育を劇的に変えるドローンの可能性!

「SDGs」という言葉を最近よく耳にする。
SDGsとは持続可能な開発目標のことで、世界規模の課題をより早く解決するために必要な目標とされている。
その目標達成のために、ドローンが一役買うのではないかと今、注目をされている。
SDGs教育とドローンの可能性について、専門家である井上、新井の両氏に語っていただいた。

井上 創太(いのうえ そうた)
株式会社BYD 代表取締役
情報経営イノベーション専門職大学 客員教員
大学在学時に株式会社BYDを設立し、代表取締役に就任。延べ1万人以上の学生に探究学習やキャリア教育のコンテンツを制作・指導しており、高い信頼を得ている。
http://www.3rd-class.jp/company
新井大和(あらい やまと)
株式会社ワールドスキャンプロジェクト 管理部 
最先端のロボット工学を備えたSDGsをテーマに、学校でドローンを教材にした授業、ドローンを使った社会貢献事業などを展開。
https://www.world-scan-project.com/

――そもそもSDGsとは何なのでしょうか
井上 SDGsとはSustainable Development Goalsの略で、「持続可能な開発目標」というものです。2015年に国連が環境サミットで定めたもので、全部で17のゴールと、それらを達成するための具体的な169のターゲットで構成されており、すべてのターゲットを取り残さずに、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指すための国際目標になります。このまま地球の状況が悪くなると、私たちの生活環境にもかかわってくる。そんな中で、100年後、200年後も住める地球であるために、国連主導で世界中の国や企業が動き始めているのです。昔から話題になっていたオゾン問題や地球温暖化といった気候変動だけでなく、地球規模で取り組む必要がある課題や目標について定められていて、「海の豊かさを守ろう」とか「人や国の不平等をなくそう」など、さまざまなものがあります。

――SDGsが最近話題になるのはなぜですか
井上 主に2つの理由があると考えています。1つは学習指導要領のなかに、SDGsに関して勉強をする項目が入ったということです。そのため、総合的な学習の時間や道徳の時間の中で、SDGsという言葉が使われるようになっています。10代のSDGs認知率は上の年代よりも高いと思いますよ。もう1つはSDGsという単語がメディアでも非常に多く取り上げられるようになったことだと思います。3年前と比較するとかなり増えましたね。これは、企業の評価というものが実際の企業利益だけでなく、社会の課題を解決することに貢献しているのか、SDGsの達成に向けた事業活動ができているのかという点を含めて算出されるようになってきていることが大きいと思います。

新井 私は、目標が17個あることによって、SDGsが浸透してきていると思います。17の目標を達成できているかどうか、企業でも教育でも何かには当てはまりますからね。当然ながら、ワールドスキャンプロジェクトでもSDGs達成のために企業として何ができるかを考えて実行しています。

井上 そうですね。教育現場では、ニュースを見たり社会問題を調べたりするときに、それが17の目標のどれにあてはまるだろうか、といった会話がなされていると思います。目標の一つひとつが分かりやすいですし、さまざまな分野に分かれているので身近に感じやすく、自分の興味や関心と世界の目標が一致しやすくなっていると思います。

――SDGsについて課題はありますか
井上 課題は、SDGsに取り組んでいるふりをしているだけというものがあります。社会問題の解決やSDGsを本気で達成しようとしているのではなく、見せかけだけのSDGsが出てきていることです。そのため、消費者は企業がどういう姿勢でSDGsに取り組んでいるのかを見極めていく必要があります。また、そのための判断力をつけていくことが必要になってきています。

新井 SDGsに取り組んでいるように見えて、実態が伴っていないビジネスのことを揶揄する言葉に、「SDGsウォッシュ」というのがあります。たとえば、SDGsの取り組みの一つである「貧困をなくそう」という目標を瞬間的に達成するためには労働を増やせばいいかもしれません。しかし、それによって森林伐採が起こったら、別の目標である「陸の豊かさも守ろう」は達成できなくなってしまいます。17の目標はすべて連動しているので、そのことを忘れずに、正しいものを選ぶ目を養っていってほしいです。

井上 この課題を解決するためには、まず、SDGsウォッシュを応援しないこと、そして本当にSDGsに取り組んでいる企業を応援することが何よりも大事です。しかし、正しい知識を持たないとメディアを見ていても判断ができません。正しい知識と経験から学ぶことが重要です。これからの世界の課題を解決していくのは若い世代の人たちです。若い皆さんに学び続けてもらって、見せかけだけのSDGsかどうかを判断していってほしい。引っかかってしまいそうな人を助けに行く力を身に付けてくれたらいいなと思います。

――SDGs教育の中でドローンの果たす役割について
井上 学習指導要領の中にSDGsを学ぶ項目が入るなど、SDGsについて学校でも学ぶべきだという風潮が大きくなってきています。世界中の人たちが協力しないと解決できない問題という、世界共通の目標に向かって、グローバル社会に生きる一人として、自分自身は何ができるのかというマインドを身に付けることに価値があるのではないでしょうか。そんな教育を受けている子供たちの意識は高いですよ。子供たちの方が、大人よりもきちんと考えて実行していますから、マイストローを持っている子がいたり、水筒を持ち歩いている子がいたりします。先日、ペットボトルで飲み物を飲んでいたら、子供から注意されてしまいました(笑)。我々大人が中高生から教えられることもたくさんありますね。

新井 そうですね。SDGs教育の一つのアプローチとしてドローンの講座を展開しています。ドローンはSDGsのさまざまなところに寄与し、大きく貢献することのできる重要な存在です。たとえば、ドローンはガソリンではなく電池で動くため地球にやさしいということができます。また、水中ドローンは水中を潜ることができるので、潜水艦よりも少ないエネルギー使用量で安全に効率よく、「海の豊かさを守ろう」という目標のための水質検査や海洋調査ができるかもしれません。あるいは、害虫や害獣を駆除するようなドローンがあったり、太陽光パネルの取り外しや洗浄ができるドローンなどが開発されたりしています。

井上 SDGsは、ドローン以外のものを使って達成することもできると思いますが、ドローンは目に見えるので分かりやすいんです。ドローンという切り口からSDGsを考えたときに、目に見えないSDGsというものを可視化することができます。自分と異なった視点から物事を見るきっかけになるのです。

新井 ドローンでできることは、まだまだたくさんありますよ。そんなドローンと子供たちの自由な発想が組み合わされれば、もっと面白いサービスが生まれるのではないかと考えています。また、今の子供たちは大きなチャンスが目の前にあると思ってほしいです。たとえば、現在60歳の人で、10代のころからドローンを操作していた人なんて一人もいないのです。ドローンを切り口としたSDGs講座を通して、自分たちでも社会貢献ができるのではないかとか、私たちのアイデアがもしかしたら世界を変えるのではないかとか、そのような実感を持ってくれたらいいなと思います。

――中高生へのメッセージをお願いします
新井 過去、人間はどうやって生きてきたのか、今後どうやって生きていくかということを考えられるようになってほしいです。そのための手段として、ドローンをどのように活用していけばよいのか、また、なぜドローンがそのために良いのかということを考えてもらえたら嬉しいですね。私たちも世界をより良いものにしていきたいと考えていますし、これからの未来を作っていく皆さんと一緒に楽しみながら世界を良くしていけたらいいなと思います。

井上 これから先の未来は、きっと想像がつかないような社会になっているでしょうし、その中で求められることは変わり続けていくと思います。変化し続けることが避けられない時代の中で求められるのは、その変化を楽しみながら適応していく力だと思います。そして、自分自身が社会や世界を見ていく中で、どんな問題を解決して周りの人たちを笑顔にするかを考えて行動できる人になってほしいです。

(東洋大学1年 濱穂乃香)

文教大学2年 早乙女太一/日本大学3年 辻内海成/東洋大学1年 濱穂乃香/駒澤大学4年 如意太一

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