冨永愛 チャンスが来たときにそれをつかめる自分であれ
冨永愛(とみながあい)
17歳でNYコレクションにてデビューし、一躍話題となる。以後、世界の第一線でトップモデルとして活躍。モデルの他、テレビ・ラジオ・イベントのパーソナリティ、女優などさまざまな分野にも精力的に挑戦し、社会貢献活動も行うなど、その活躍の場をクリエイティブに広げている。公益財団法人ジョイセフアンバサダー、エシカルライフスタイルSDGs アンバサダー(消費者庁)、ITOCHUSDGs STUDIO エバンジェリスト。
10代からファッションモデルとして世界を舞台に活躍する冨永さん。彼女の活動はモデルだけにとどまらず、女優、SDGsアンバサダーなど多岐にわたっている。しかし、その道のりは決して平坦なものではなかった。どんな高い壁にも挑み続ける彼女の人生哲学や今後の展望、母となって始めたエシカルな取り組みについてお話を伺った。
■コンプレックスも他の長所で補える
私は背が高いことがコンプレックスでした。中学・高校時代は、周りの多くの子が「かわいい」を求める風潮にありました。男の子にモテるのも比較的背の低い小柄なタイプの子でした。でも私はその逆です。当初はそんな自分が大嫌いで「生まれ変わりたい」とさえ思っていました。ところがファッションモデルという職業に出会い、初めてニューヨークに行ったときのことです。自分がこれまで限られた世界にいたことに気づきました。多種多様な「美」のあり方を目の当たりにしたのです。自分と同じくらい、あるいはそれ以上に背の高い人もいて、やっと同じ土俵に立てたと感じました。日本で「巨人だ」「宇宙人だ」と揶揄されて疎外感を覚えていた高身長さえも武器になったのです。自分が周りと違うと感じることでも別の世界に行けばそれが当たり前になることがあり、世界は広いのだと実感しました。「ここで戦っていきたい」、そう強く思いました。こうしてモデルとなって今日に至るわけですが、できることなら今でも「身長155センチになりたいな」と思います。でも、そういうコンプレックスというのは「他の長所で補っていける」と考えています。他の長所に磨きをかけて自信を積み重ねていくうちに、ふと振り返ると気にならなくなっていると思うのです。コンプレックスをなくしてしまうことは難しいけれど、自信を持つことによって小さくすることはできると思います。
■挑戦し続けることで道は開ける
17歳のときにニューヨークコレクションに初めて出演できると決まったときは本当に嬉しかったです。その日に向けて10センチ以上もある高いヒールを履きこなす練習をしたりと、出演に向けて全力を注いでいました。しかし、当日になって私に用意されたのは華やかな衣装ではなく、スニーカーとメンズテイストの衣装だったのです。当時の私はアジア人だから差別を受けていると感じ、屈辱でした。しかしこのときに味わった「悔しい」という思いや「絶対に負けない」という強い怒りの感情が、その後の私のモデル人生における苦難を乗り越える上で欠かせない原動力となっていきました。海外で働き始めて間もない頃、辛くてどうしようもないときがありました。そんなときによく思い出していたのが「チャンスが来たときに、つかめる自分であること」という言葉です。何かの雑誌に載っていた言葉ですが、突然オファーが来たときでも万全であるために、普段から努力を怠らずに準備をする大切さを教えてもらった気がします。私の最近の挑戦は10年ぶりのパリコレ復帰です。実績は関係なく、本当に求められなければ出演できない世界。だからこそ、やる意味があると思うし、やる意義があるんですよね。不安はありましたが、その不安とずっと戦って乗り越えて踏ん張ったからこそ、再びランウェイを歩くことができました。久しぶりに歩いてみたら何も変わっていなくて、やっぱりここが私の生きる場所だなって思いました。
■エシカルなライフスタイルが心の豊かさに
モデルの仕事以外にも〝エシカルライフスタイルSDGsアンバサダー(消費者庁)〞を務めるなど、サステナブルな取り組みにも注力しています。そもそもSDGsを意識し始めたのは子どもを授かってからです。23歳で息子を生んだのですが、自分以外のもう一つの命を持つことの責任について考えるようになったことがきっかけです。自分が食べたものはお腹の中の息子に届きます。私は少しでも安心・安全なものをという思いからオーガニックな食品を摂ることを心掛けるようになったのです。また、普段から購入する品は出来るだけ長く使えるものにするなど、エシカルなライフスタイルを意識するようになりました。日々の生活の中で自分たちにできるサステナブルな取り組みを探すことが心の豊かさ、ひいては人生の豊かさにつながっていくと考えています。コロナ禍で先行きが見えず、不安な日々を過ごしている学生の方も多いのではないでしょうか。私も高校生の息子がいますので、今の学生がどんな思いで学生生活を過ごしているのかと考えることがよくあります。しかし、きっと学校の先生方も学生の皆さんのために今この状況でできることを一生懸命にやってくださっていると思います。皆さんは今の自分に出来ることから一つずつやっていき、短い学生生活を楽しく過ごしていただけたらと思います。
(津田塾大学3年 宮田紋子)
INFORMATION
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