品川女子学院中等部・高等部

品川女子学院は「世の中に貢献できる女性を育てる」という理念の下、卒業後の人生を見据え「28project」という取り組みを続けている。この取り組みは、28歳の自分を思い描き、それを実現するためには何が必要か、どう行動すべきかを模索し、理想とする未来に向かっていくプロジェクト。さまざまな取り組みを実践しており、学校内外から注目を浴びている。

■28プロジェクトとは

品川女子学院では、18歳で高校を卒業して10年後である28歳のときに、社会に貢献できる女性になることを目指して「28project」を行っている。この「28」という数字は、女性が仕事、結婚、出産といった自身の将来を考える上で、ターニングポイントとなる年齢だという考えのもとに生まれた数字である。
高校を卒業したときにスタートを切り、能動的に人生を設計できるように、中学校・高校の6年間を通して、さまざまなプログラムや課外授業を行っている。なかでも、中学校の3年間では自分たちで課題を見つけ、その見つけた課題を解決する力を身に付けることを目的にしており、「地域・日本・世界」を知ることを1年ごとのテーマにしている。
その間に行われるさまざまなプログラムの中で、生徒たちは試行錯誤を繰り返しながら学んでいくとともに、自分の知らない世界を知ることで、今まで気づいていなかった他者の問題を自分のことのように考えて解決していく。

■社会人による特別講座

教科の枠に収まらないアクティブな講座

 放課後などに外部の社会人の方に来てもらい、希望者に向けて行っています。ただ話を聞くだけでなく、何かをやろうという発想から始まっている、とてもアクティブな講座です。 たとえば、学校では数学という授業を受けますが、この講座では数学が社会でどのように役立つかということを学んでいくイメージですね。生徒が興味の持てることが一つでもあればいいなという思いから、これまでにテレビ番組や学校ポスターの制作、雑誌の編集のほか、実験や観察を交えて学問的な探究心を深めたり、女性としての自分や未来像を見つめたり、ICTを活用したり、多種多彩な講座を実施してきました。
具体的には、「通学路を考えよう」という身近な問題に向き合うものから、「サンシャイン水族館特別講座」のように、実際の企業が抱えている問題を解決するために、この問題について学びながら解決策を提案していくようなプログラムまでさまざまです。社会の一員としてどういう立場に立てればいいのかということを身に付けたり、企業に実際に行く機会がある場合は、社会の空気感を味わってほしいと思っています。
実際に、特別講座に参加した企業へ就職した卒業生もいるので、生徒が自分の生き場所や面白いと思うことを見つけられたのがうれしいですし、この講座が将来の道を選ぶきっかけになったらいいなと考えています。
また、この講座で大切にしているのは他学年とのつながりです。中学生が奇想天外な面白いアイデアを出し、高校生がそれをまとめ、現実に可能かどうかを考える。このように一緒に作り上げていくことによって素晴らしいゴールが見えることがあります。
品川女子学院では、縦のつながりが生まれるのがどうしても部活だけになってしまいがちなので、それ以外の縦のつながりができる場であったらいいなと思っています。中学生、高校生の皆さんには、ぜひ、自分の最適空間を見つけてほしいです。そして、自分が無理せず頑張る気になるところで花を咲かせていってください。

教論 河合 豊明(かわい とよあき)

■企業コラボレーション総合企画

社会人の方と接することのできる貴重な機会

 中学3年生で行うこの企画では、生徒と実際の企業の方が新商品開発や広告作成、ウェブサイトの企画などのゴールを共有し、そのゴールに向かって共同で作業を進めます。社員の方にマーケティングなどを教えて頂きながら、生徒がさまざまなアイデアを出して形にしていくのですが、まだまだ頭の柔らかい中学3年生からは、たくさんの豊かな発想が次々と出てきますね。
このコラボレーション企画が身の回りのことや日本を知るきっかけや、実際の社会人の方との交流を通して自分の進路を考えるきっかけになって欲しいと思っています。親でも学校の先生でもない、第三者の企業の方々に認めてもらい、褒めてもらうことによって、自己肯定感を高めることができます。生徒が“自分の好き”や“興味・関心”、“こだわり”を貫き通せる環境はとても大切だと思っています。私自身も講師の方に知らないことを教えてもらえることで、生徒と同じような目線で新たな学びがあるのでとても楽しいです。
中高生のみなさんには、自分の身の回りにあるいろんな選択肢やチャンスの情報をキャッチして、自分の世界を決めずにチャレンジして、自分にしかできないことを見つけていってほしいですね。選択しなかったことで後悔だけはしないように、何度もトライ&エラーを繰り返してみてください。

教論 中村 渚央(なかむら なお)

■最優秀チーム
クラス担任の植草先生に、企業とのコラボについて、Q&Aでお答えいただいた。

Q 企業コラボが始まったときの、クラスの雰囲気はいかがでしたか
A 時計会社とコラボするという時点で、興味を持った生徒が多かったです。

Q 企業コラボを通して先生ご自身が心がけたことはありますか
A 私自身、時計をデザインするという視点で見たことはありませんでした。担任としても同じ目線で知ろう、勉強しようと心がけ、自分でも時計の雑誌とか広告を見るようにしました。

Q 生徒を指導するにあたって、生徒のアイデアを掘り起こすような働きかけはしましたか
A 生徒は、セイコーの方から「どういう時計がいい時計?」と聞かれたときに、「かわいい時計」と言いがちでした。ですので、「どういうのが自分にとって“かわいい”なの?」と根本的な部分を考えるように問いかけ続けました。

Q チーム分けはどのようにして決めたのですか
A チーム分けは仲の良い子供同士が集まるようにし、時計を持っている生徒と持っていない生徒をミックスして、さらにリーダーシップのある子や絵を描ける子を混ぜて、担任が決めました。

Q 授業はどのような形で実施しましたか
A 全部で6回の授業でした。各クラスに1人社員の方が来てくださり、全クラスへの説明の時だけZOOMで実施し、後は対面での授業でした。チームによっては夏休みに生徒だけでZOOMを使って話し合っていたようです。

Q グループワークの雰囲気はいかがでしたか
A チームごとの温度差は最後まで解消されなかったように思います。共通して言えることは、他のチームのことを気にせず、黙々と取り組んでいたように思います。お互いに最後のプレゼンの場で他のチームのしていることを知ったようでした。

Q 最優秀チームに選ばれたグループは何が違っていましたか
A 選ばれたグループは、最初からたくさんのアイデアが出ていました。日常生活と時計の関係を連想して考えていたようで、考え抜かれたアイデアが最初から出ていました。

Q 中学3年で実施することについてはいかがお考えですか
A 高校生になると今までよりも自分でできることが増えます。その前に企業の方の力を借りて一緒にやってみることは、進路を考えるきっかけとして必要な機会だと思っています。

中学3年生クラス担任 植草 穂乃香(うえくさ ほのか)

津田塾大学3年 北川明日真/東洋大学1年 濱穂乃香/津田塾大学3年 川浪亜紀/文教大学2年 早乙女太一/日本大学3年 辻内海成

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